経験的プロセス制御 (Empirical Process Control)
経験的プロセス制御(経験主義)は、実際の体験・観察・実験から得られた客観的な事実に基づいて意思決定を行うアプローチであり、スクラムの根幹をなす思想である。予測困難な問題や不確実性の高いプロダクト開発において、事前計画への過度な依存を避け、反復的かつ漸進的な手法により予測可能性を最適化しリスクを制御することを目的とする。
本理論は「透明性」「検査」「適応」という3つの柱によって支えられている。作業状態やモデルなどの現状を関係者全体に可視化・共有し(透明性)、定常的にゴールや要求に対する進捗とギャップを観察する(検査)。そして問題や逸脱が検知された場合には迅速に製品やプロセスを調整・最適化する(適応)。スクラムでは各種イベントを通じてこのサイクルを回し、データ駆動型の意思決定と継続的な改善を実現する。
経験的プロセス制御の構成要素およびスクラムにおける位置づけの詳細は以下の通りである。
-
経験主義とデータ駆動型の意思決定 知識は事前の過度な計画からではなく、実際の体験や観察、実験といった既知の事実から得られるという経験主義に基づいている[1][2][3][4]。実際の観察や客観的なエビデンスに基づくデータ駆動型の意思決定を行い、予測不能な問題に対処することで、不確実性の高い開発における予測可能性を最適化し、リスクを低減・制御する[1][5][2][3][6][4]。
-
3つの柱(三大要素) 経験的プロセス制御を確立・維持するためには、「透明性」「検査」「適応」の3つの柱が不可欠とされる[1][5][2][3][4]。
- 透明性(Transparency) 成果に影響を与えるプロセスの状態、作業内容、システム等のモデルの現状が、ステークホルダー全体に可視化され共有されている状態を保証する[1][5][3][4]。これにはプロセスや開発状態の可視化だけでなく、「完了」の定義を含めた標準化された用語や定義の共有が必要とされる[5][3][6]。
- 検査(Inspection) 設定されたゴールや要求に対する進捗とギャップ、あるいは受け入れ難い変化や目標からの逸脱・不備を定常的かつ頻繁に確認・調べる[1][5][3][6][4]。ただし、検査自体の実行が業務やプロセスの妨げとならない適切な頻度で行うことが求められる[1][5]。
- 適応(Adaptation) 検査の結果、プロセスやプロダクト(成果物)の逸脱が許容値を超えている、あるいは問題・不備が発見された場合、製品やプロセスを即座に修正・調整して最適化を行う[1][5][3][6][4]。
-
反復的・漸進的アプローチとスクラムイベントにおける実践 スクラムでは、反復的かつ漸進的な手法を取り入れることで予測可能性を最適化し、リスクを管理する[1][5][2][3]。スプリント計画、デイリースクラム、スプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブといった各種スクラムイベントを通じて定期的な検査と適応の機会が提供される。迅速なフィードバックループと客観的なデータを活用することにより、チームは反復的・漸進的にプロダクト開発とプロセスの継続的改善を進めることができる。
- 所属タグ: Empiricism Scrum Core Inspection Adaptation Transparency
- カテゴリー: Scrum Core
関連動画 (YouTube)
Section titled “関連動画 (YouTube)”- スクラムで進めるシステムマイグレーション - Noriaki Tsushi
- すぐに使える! システム思考を現場で実践するための3つのやりかた - Keita Watanabe
- IMPACT !! ゴールとアウトカムからはじめる経験的アプローチ - Tomoharu Nagasawa
-
Scrum Guide 2011 October(ライセンス: All Rights Reserved) ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
Scrum Guide 2013(ライセンス: CC BY-SA 4.0) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
-
Integration of MBSE and scrum for complex system development: the sMBSAP proposal(ライセンス: CC BY 4.0) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
An Ontology-based Approach to Enable Data-driven Decision-making in Agile Software Organizations(ライセンス: CC BY 4.0) ↩ ↩2 ↩3 ↩4