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スクラム未経験の新人やメンバーに、スクラムをどう教えるか?

実践者の問い(pq-15)。取り込み済みの文献のうち 12 本から拾った 31 件の事例と知見にもとづく。ここに無い打ち手が存在しないという意味ではない。

スクラムを知らない新人や、新しく加わったメンバーへの教え方を、実務で比べて効果を確かめた文献は、今回読んだ範囲では見つかっていません。拾えたのは、現場の聞き取り、組織の取り組みの報告、スクラムマスターの役割の記述などで、いずれも教え方の効果を測ったものではありません。比べた実験は大学生を対象にした 1 本だけで、実務の新人への教え方の根拠としては読めません。

最も具体的なのは、経験の浅い新人を定期的に迎える英国の大学の 1 チームの事例です。予算の制約で正式な研修は無く、新人は初日から仕事に入り、やりながら学んでいました。初めて出るイベントは直前に進め方と理由を説明しました。採用の面接で理解を確かめ、知らない人には調べておくよう勧め、入った後にスクラムガイドを送って自習を求めています。新人には常勤のメンバーを 2〜3 週間付けて組ませ、時間の短い非常勤の新人には小さな作業を任せました。一方でチーム自身が、新人向けの資料にアジャイルの正式な説明が無いことを、あるべきだと認めていました。大学を出たばかりの新人は自分たちで決めて動くことに慣れずにチームリードへ指示を求め、週に 15 時間までの非常勤の新人には原則と文化を伝えにくい、とも語られています。どれも本人たちの受け止めで、理解の程度は測られていません。

新人の受け入れを調べた別の文献にも、似た進め方が挙がっています。スウェーデンの 4 社の大規模アジャイルの聞き取りでは、システムの一部だけの狭い仕事から始めさせる進め方が語られました。経験のある同僚と組ませて見て学ばせる進め方や、SAFe の研修を初めに設ける進め方も語られました。1 社ではプロダクトオーナーとスクラムマスターが新人を支えていましたが、スクラムをどう教えたかは、スプリントの進み方を話すという短い記述にとどまります。

同じ聞き取りには、困りごともありました。導入の授業や会議を詰め込むと、情報が多すぎて負担だったという声があります。新人が知識不足で質問そのものをできないことがあり、分かっていない点をチームがつかみにくいとも書かれています。

ある保険会社の 1 チームでは、面接でスクラムの経験を確かめていました。イベントは短く説明してすぐに加わらせ、スクラムマスターの振る舞いを手本にさせていました。遠隔では新人の反応が見えないので、指示が伝わったかを何度か聞き直していました。どれも聞き取りにもとづき、効果は測られていません。

組織の事例では、アジャイルを 5 年を超えて続けた事業部門が、新しく入った人向けの導入で「この組織のアジャイル」の説明会を開き、配属先の専門職と最初の数か月に時間を取る機会が設けられていました。離職が増えると教える量が増える一方、割ける時間は決まっているとも語られています。遠隔のスクラムチームのアクションリサーチでは、スクラムマスターが 1 日の質疑中心の研修を開き、同時に行った対策全体の評価は好意的でしたが、研修だけの効果は切り分けられていません。

研修とコーチについては、大規模な変革の文献レビューが、研修に出るだけでは心構えの転換が難しく、実際の仕事の場でのコーチが要ると述べています。Ericsson の事例では、研修への参加が任意で、基本の言葉の理解が人によって揃わないという声があり、コーチの人数は足りないと感じられていました(著者は、どちらも最も重要な課題ではなかったと書いています)。Bosch の調査では、スクラムマスターの大多数が手法を主な仕事に挙げ、開発者はスクラムマスターの振る舞いを観察して真似ることで学ぶと語られています。

大学生を対象にした実験では、スクラムの講義だけの群、講義のあとにボードゲームを遊んだ群、仮想ゲームを遊んだ群を比べ、ゲームを遊んだ群だけ、概念を問う短いテストの得点が前後で有意に上がったと報告されています。ただし対象は大学生で、ゲームの群には遊ぶ時間が加わっており、テストの問いはゲームで扱う問いから作られ、著者らはゲームの開発者です。数値の報告はあるものの、原典で照合していません。

実務の場で未経験の人にスクラムを教える場面を、教え方を変えて追った記録はありません。大学のセミナーを eduScrum で運営した試行は、スクラムを教える授業ではなく、スクラムで授業を運営した事例です。

スクラムのイベントを新人に短く説明したうえで、すぐにその場に加わらせていた [Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team…(2024)]

Section titled “スクラムのイベントを新人に短く説明したうえで、すぐにその場に加わらせていた [Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team…(2024)]”
  • 状況: 保険会社の IT 部門にある、スクラムで動く 1 チームの事例(9 人)。 1 週間のスプリントで動き、勤務はハイブリッド(遠隔が週に 4 日、出社が 1 日)。スプリントプランニング、デイリースクラム、スプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブを開いていた。
  • やったこと: 四つのイベントを新人に短く説明したあと、新人をそれらの一連の場に直接加わらせた。そうすることで、チームのやり方を理解できるようにしたと、著者は書いている。
  • 起きたこと: 新人の開発者は、デイリーでは各自がその日の作業と解けていない障害を話すと説明した。スプリントレビューについても、利用者・プロダクトオーナー・部門長が出る場で、チームが成果を説明し、上司が次の仕事への意見を述べると説明した。著者は、これによって新人が、チームが期待する結果を理解しやすくなると書いている。新人の理解の程度を測った値は書かれていない。
  • 注意点: 聞き取りの発言と著者の記述にもとづく 1 チームの報告で、説明の有無や短い説明と長い説明を比べた結果ではない。説明の内容や長さは、本文に詳しく書かれていない。新人が自分の言葉で話した内容が合っているかを、確かめた記述はない。
  • 根拠: 事例研究/単一チーム。文献: Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team at an Insurance Company(2024)。文献の種類: 論文・研究者。位置: Result and Discussion — Onboarding Activities(Coaching and support / Scrum Events)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “The four activities in Scrum are briefly explained to new members, then new members will be directly involved in the series of activities”

面接でスクラムの経験を確かめて新人の必要を見通し、経験の無い人も受け入れていた [Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team…(2024)]

Section titled “面接でスクラムの経験を確かめて新人の必要を見通し、経験の無い人も受け入れていた [Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team…(2024)]”
  • 状況: 保険会社の IT 部門にある、スクラムで動く 1 チームの事例(9 人。スクラムマスター 1 人、品質保証 4 人、開発者 4 人)。 1 週間のスプリントで動き、勤務はハイブリッド(遠隔が週に 4 日、出社が 1 日)。採用は正式な手順で行われ、面接では技術と技術以外の評価をする。スクラムを使ったことのない候補者の多くは新卒だと、メンバーは語っている。
  • やったこと: 採用の面接で、候補者がスクラムをどれくらい経験しているかを確かめ、入ってから何が必要かを見通そうとした。スクラムを使ったことのない候補者も受け入れていた。
  • 起きたこと: 開発のチームリーダーは、面接の目的を、スクラムの経験を知って新人の必要を予測するためだと述べた。品質保証のチームリーダーは、候補者がスクラムを実践する力を測りたいが、スクラムを使ったことのない人(ほとんどが新卒)も受け入れていると述べた。面接で見つけた差を、入った後にどう埋めたかは書かれていない。
  • 注意点: 聞き取りの発言にもとづく 1 チームの報告で、面接の効果は測られていない。確かめているのはスクラムの経験や力で、新人の理解の程度を入った後に確かめて教え直した事例ではない。著者は、面接でわかる知識の差から、新人の必要を見通せると書いているが、実際に見通せたかは検証されていない。チームは、新人へのメンタリングの方法を取り入れていないと著者は書いている。
  • 根拠: 事例研究/単一チーム。文献: Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team at an Insurance Company(2024)。文献の種類: 論文・研究者。位置: Result and Discussion — Onboarding Activities(Recruiting / Onboarding During Recruitment)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “but we still accept candidates who have never applied Scrum, most of them are fresh graduates”

シニアと組ませて複雑な問題を解かせたことが、いちばん学べた方法だったと、あるメンバーは語った [Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team…(2024)]

Section titled “シニアと組ませて複雑な問題を解かせたことが、いちばん学べた方法だったと、あるメンバーは語った [Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team…(2024)]”
  • 状況: 保険会社の IT 部門にある、スクラムで動く 1 チームの事例(9 人)。勤務はハイブリッドで、新人が入ってくる。コーチと支えの活動として、ペアプログラミングとペアテストが挙がっている。
  • やったこと: 新人を、ペアプログラミングで経験のあるメンバーと組ませた。テストでも、ペアでの作業(ペアテスト)を行っていた。ペアテストは、このチームで見つかり、既存の枠組みに足された項目だと、著者は書いている。
  • 起きたこと: 開発者の 1 人は、自分の経験から、いちばん学べた方法はペアプログラミングで、シニアと組んで複雑なアルゴリズムを解いた。新しい考えに開かれる姿勢も学んだと述べた。品質保証のメンバーは、テストのときに他の人の見方を尋ねることが多く、人によってやり方が違うからだと述べた。学ぶ速さや理解の程度を測った値は書かれていない。
  • 注意点: 聞き取りの発言にもとづく 1 チームの報告で、ペアにした場合としない場合を比べた結果ではない。語っている開発者は、入って 1 年たった確立したメンバーで、自分の経験を振り返っている。コードやテストの学びの話で、スクラムの考え方やイベントを教える方法として調べたものではない。
  • 根拠: 事例研究/単一チーム。文献: Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team at an Insurance Company(2024)。文献の種類: 論文・研究者。位置: Result and Discussion — Onboarding Activities(Coaching and support / Pair Programming / Pair Testing)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “From my experience, the best way to learn was pair programming, I was paired with a senior team to solve complex algorithms, and from here I also learned how to become open to new ideas”

遠隔では新人の反応が見えず、指示が伝わったかを確かめるために、スクラムマスターは何度か聞き直していた [Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team…(2024)]

Section titled “遠隔では新人の反応が見えず、指示が伝わったかを確かめるために、スクラムマスターは何度か聞き直していた [Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team…(2024)]”
  • 状況: 保険会社の IT 部門にある、スクラムで動く 1 チームの事例(9 人)。新型コロナの流行を受けてハイブリッド勤務を取り入れていて、遠隔では新人の反応が見えない。著者は、遠隔や混在の勤務で新人を迎えると、役割・期待する成果・組織の手順が曖昧になりうる、と書いている。
  • やったこと: スクラムマスターは、新人に出した指示が伝わったかが確かではないとき、反応が見えないので、何度か聞き直して確かめていた。
  • 起きたこと: 結果の記述なし。 スクラムマスターは、反応が見えないので、確かめるために何度か聞き直す必要があると述べた。著者は、新人は期待をはっきりさせるため、既存のメンバーと話すよう勧められると書いている。聞き直した結果、新人の理解がどうだったかは書かれていない(結果の記述なし)。
  • 注意点: スクラムマスターの発言と著者の記述にもとづく 1 チームの報告で、聞き直しの効果は測られていない。理解の程度を確かめる決まった方法や、教え直しの事例ではなく、確かめる必要があるという困りごとが主である。スクラムの考え方の教え方ではなく、指示や期待の伝わりの話である。
  • 根拠: 事例研究/単一チーム。文献: Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team at an Insurance Company(2024)。文献の種類: 論文・研究者。位置: Result and Discussion — Newcomer Adjustments(Room for Abstraction: Clarity on Expectations / Personal Interaction)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “because we could not see their reaction, so we need to ask a couple more times to ensure”

手本は新人に役立つとメンバーは述べ、あるメンバーはスクラムマスターを見て、困ったときにチームへ質問するようになったと語った [Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team…(2024)]

Section titled “手本は新人に役立つとメンバーは述べ、あるメンバーはスクラムマスターを見て、困ったときにチームへ質問するようになったと語った [Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team…(2024)]”
  • 状況: 保険会社の IT 部門にある、スクラムで動く 1 チームの事例(9 人)。勤務はハイブリッドで、スクラムマスターが 1 人いる。このチームは新人へのメンタリングの方法を取り入れていないと、著者は書いている。
  • やったこと: スクラムマスターが、メンバーが困っているときに、チームで話し合うよう呼びかけるなど、日常の振る舞いで手本を見せていた。手本を見せることを狙った、教えるための仕組みとして設けられたものかは、本文に書かれていない。
  • 起きたこと: メンバーは、手本は新人に役立つと述べた。確立したメンバー(品質保証)は、仕事のやり方が分からないとき、出社している日にグループやチームに質問すると述べた。それは、スクラムマスターが困っているメンバーに話し合いを呼びかけるのをよく見ているからだと述べた。著者は、新人もスクラムマスターの調整の仕方を真似て、自分で超えられない障害に対処できると書いている。著者は、新人がアジャイルの考え方を保つには、チームリーダーやスクラムマスターの手本に従うことが要る、と書いている。新人の理解の程度を測った値は書かれていない。
  • 注意点: 聞き取りの発言と著者の解釈にもとづく 1 チームの報告で、手本を見せた場合と見せない場合を比べた結果ではない。手本を見て学んだと述べたのは、新人ではなく、入って 1 年たった確立したメンバーである。手本は、日常の振る舞いを見て真似るものとして語られていて、教えるために設けた手順とは書かれていない。
  • 根拠: 事例研究/単一チーム。文献: Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team at an Insurance Company(2024)。文献の種類: 論文・研究者。位置: Result and Discussion — Onboarding Activities(Coaching and support / Role Modelling)/ Mindset change(Becoming agile)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “Team members stated that role modeling is beneficial for newcomers.”

大学を出たばかりの新人は、自分たちで決めて動くことに慣れておらず、チームリードに指示を求め、最初から完璧な解決策を探そうとすることもあった [Onboarding(2020)]

Section titled “大学を出たばかりの新人は、自分たちで決めて動くことに慣れておらず、チームリードに指示を求め、最初から完璧な解決策を探そうとすることもあった [Onboarding(2020)]”
  • 状況: 英国の大学の IT 部門にある、Scrum で動く開発チームの事例。メンバーは同じ場所で働き、経験の浅い新人を定期的に迎えていた。チームリードは、大学を出たばかりで、自己組織化された権限のあるチームで働いたことがない新人の受け入れが難しいと語った。
  • やったこと: チームリードは、新人どうしが自分たちの会議を開いて進める場を作り、きっかけを作ったら身を引いて、自分たちで決めるよう促した。確立したメンバーも、「これはあなたたちのための会議」と促し続けた。
  • 起きたこと: 新人は、会話の中で上の立場のチームリードに指示を求めることがあった。確立したメンバーの側にも、チームリードか語り手本人のどちらかがオフィスにいないとスタンドアップが開かれないことがあるという語りがあった。忙しいときには、メンバーをスプリントから抜いて修正させるような、指示して動かす対応が出たという語りもあった。新人は、まず始めてみて、失敗してもやり直す実験的な心構えを持つのが難しく、最初から完璧な解決策を探そうとするとチームリードは語った。これらの変化を測った値は書かれていない。
  • 注意点: 聞き取りの発言にもとづく 1 チームの報告で、促し方の効果は測られていない。忙しいときの指示して動かす対応は、確立したメンバーの語りであり、新人への対応かどうかは、本文が分けて書いていない。新人は若く経験の浅い学生や見習いが中心で、経験を積んだ中途の新人には当てはまらないかもしれない。
  • 根拠: 事例研究/単一チーム。文献: Onboarding: How Newcomers Integrate into an Agile Project Team(2020)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.3 Onboarding Challenges for the Newcomers and the Agile Project Team(Empowerment / Mindset change)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “they may turn to me in terms of a position of authority”

新人が初めてイベントに出る直前に、そのイベントの進め方と理由を説明していた [Onboarding(2020)]

Section titled “新人が初めてイベントに出る直前に、そのイベントの進め方と理由を説明していた [Onboarding(2020)]”
  • 状況: 英国の大学の IT 部門にある、Scrum で動く開発チームの事例。メンバーは同じ場所で働き、経験の浅い新人を定期的に迎えていた。イベントとして、デイリースタンドアップ、スプリントプランニング、リファインメント、スプリントレビュー、レトロスペクティブを開いていた。
  • やったこと: 新人が初めて出るイベントは、始まる前にその場で説明した。たとえば、スタンドアップの直前に、そこで何を求められるかを説明した。デイリースタンドアップは、非常勤の新人のために、1 日に 2 回開くこともあった。
  • 起きたこと: ある新人は、朝のスタンドアップがある理由や、スプリントの前後の会議を、始まる前に説明してもらえたと述べた。別の新人は、会議に入る前に説明を受けていたので、中で起きたことに驚かなかったと述べた。一方で、ある新人は、スタンドアップでチームの言葉をまだ理解していないので、分かればもっと理解できると述べた。理解の程度を測った値は書かれていない。
  • 注意点: 新人本人の発言にもとづく報告で、説明の有無で比べた結果ではない。何をどこまで説明したかの内容は、本文に詳しく書かれていない。 1 チームの事例で、新人は学生や見習いが中心である。
  • 根拠: 事例研究/単一チーム。文献: Onboarding: How Newcomers Integrate into an Agile Project Team(2020)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.2 Onboarding Practices — Coaching and Support(Ceremonies / Daily stand-up meetings)/ Training(Immersion)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “As part of the immersion approach, ceremonies were explained to newcomers the first time they attended.”

正式な研修が無いチームで、新人は初日から実際の仕事に入り、仕事をしながら学んでいた [Onboarding(2020)]

Section titled “正式な研修が無いチームで、新人は初日から実際の仕事に入り、仕事をしながら学んでいた [Onboarding(2020)]”
  • 状況: 英国の大学の IT 部門にある、Scrum で動く開発チームの事例。メンバーは同じ場所で働き、経験の浅い学生や見習いを定期的に迎えていた。予算の制約で、常勤の職員向けの正式な研修は用意されておらず、ほとんどのメンバーが忙しくて外部のイベントにも出られなかった。学生と見習いは、すでに学校の正式な課程に出ていた。
  • やったこと: 新人は初日からチームの仕事を始め、学びや人との関係づくりの多くを、役に立つメンバーとして働くことで進めた。期待されることや助けの求め方についての導入を済ませたうえで、あとは仕事に入ってもらうと、確立したメンバーは語っている。
  • 起きたこと: ある新人は「深いところに放り込まれた」と感じつつ、日々チームと一緒にやりながらやり方を学んでいると述べた。同じ新人は、実際には実践的で、必要なときに説明が加わる形だったとも述べた。学ぶ速さや理解の程度を測った値は書かれていない。
  • 注意点: 聞き取りと観察にもとづく 1 チームの報告で、研修と比べた結果ではない。研修が無いのは予算の制約による状況である。聞き取りはチームの半数を超える人に行ったが、全員ではなく、著者は他の場面への移しやすさが限られるとしている。新人の多くは学生か見習いで、経験を積んだ中途のメンバーを迎える場面とは前提が違う。
  • 根拠: 事例研究/単一チーム。文献: Onboarding: How Newcomers Integrate into an Agile Project Team(2020)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.2 Onboarding Practices — Training(Formal training / Immersion)/ 5 Discussion。確認の根拠: 原典
  • 原文: “Newcomers started working in the team from their first day and much of the learning and socialisation was accomplished by being a productive member of the team.”

面接で新人のアジャイルの理解を確かめ、知らない人には自習を求めてスクラムガイドを送ったが、新人向けの資料にアジャイルの正式な説明が無いことを、チーム自身が認めていた [Onboarding(2020)]

Section titled “面接で新人のアジャイルの理解を確かめ、知らない人には自習を求めてスクラムガイドを送ったが、新人向けの資料にアジャイルの正式な説明が無いことを、チーム自身が認めていた [Onboarding(2020)]”
  • 状況: 英国の大学の IT 部門にある、Scrum で動く開発チームの事例。経験の浅い学生や見習いを定期的に迎えていた。新人向けの資料として、新人向けの資料(New staff pack)、チームの働き方の資料、チームが顧客に配る資料を新人にも渡していた。新人向けの資料にチームのアジャイルのやり方の詳しい説明が無いことを、チームも認めていた。
  • やったこと: 採用の面接で、チームリードが新人のアジャイルの理解を尋ね、知識の差を見つけた。アジャイルを知らない人には、問題ないが調べておくよう勧め、オンラインの資料へのリンクを渡した。入ったあとは、原則が書かれたスクラムガイドを新人に送り、これが自分たちのやり方だと話した。チームを続けたいなら仕事の外で学ぶよう求めた例もある。
  • 起きたこと: 新人の一部は自分から取り組み、インターネットでの下調べやオンライン講座の受講をしたと述べた。一方で、新人向けの資料にチームのアジャイルのやり方の詳しい説明が無いことを、アシスタントのプロジェクトマネージャーは欠けている要素と認め、あるべきだと述べた。自習の効果や、チームの理解がどれだけ進んだかを測った値は書かれていない。
  • 注意点: 聞き取りの発言にもとづく 1 チームの報告で、自習や資料の効果は測られていない。自習は、新人の一部が自分から取り組んだと書かれており、全員が行ったかは書かれていない。仕事の外での学習を求める進め方は、時間を取りにくい非常勤の新人には負担になりうる。本文はこの点を、非常勤の新人に原則を伝える難しさとして別に述べている。
  • 根拠: 事例研究/単一チーム。文献: Onboarding: How Newcomers Integrate into an Agile Project Team(2020)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.2 Onboarding Practices — Recruiting Process(Onboarding during recruitment)/ Orientation(New staff pack / Agile method pack)/ Training(Self-study)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “there’s no formal element. There should be.”

新人に常勤のメンバーを 2〜3 週間付けて組ませ、時間の短い非常勤の新人には小さな作業を任せていた [Onboarding(2020)]

Section titled “新人に常勤のメンバーを 2〜3 週間付けて組ませ、時間の短い非常勤の新人には小さな作業を任せていた [Onboarding(2020)]”
  • 状況: 英国の大学の IT 部門にある、Scrum で動く開発チームの事例。メンバーは同じ場所で働き、非常勤の学生や見習いの新人を定期的に迎えていた。新人には、チームリードによる個人的な歓迎、指導役(メンター)、Scrum の相談役(コーチ)が付いていた。
  • やったこと: 新人が最初に入ったとき、同じ常勤のメンバーと、およそ 2〜3 週間組ませてから、特定の領域を 1 人で任せた。時間の短い非常勤の新人には、小さなユーザーストーリーや軽いバグの修正のような、小さな作業を任せた。ある新人を迎えたとき、テスト駆動開発をペアプログラミングに足した例もある。
  • 起きたこと: 指導役を付けることは、ほとんどの新人にとってオンボーディングの重要な部分と見られた。チームリードは、指導がチームメンバーの口から伝わるほうが、本人にとって学びやすいことを期待していると述べた。ペアでのテストの追加について、新人は、動くかどうかを確かめられるので良いと述べた。学ぶ速さを測った値は書かれていない。
  • 注意点: 聞き取りの発言にもとづく 1 チームの報告で、ペアや指導役の有無で比べた結果ではない。チームリードの期待(メンバーの口から伝わるほうが学びやすい)は期待であり、検証された結果ではない。学生や見習いの新人が中心で、小さな作業を任せる進め方は、常勤で入る経験者には当てはまらないかもしれない。
  • 根拠: 事例研究/単一チーム。文献: Onboarding: How Newcomers Integrate into an Agile Project Team(2020)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.2 Onboarding Practices — Coaching and Support(Mentoring / Pair programming)/ Feedback Tools(Testing / Small tasks)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “for about 2 to 3 weeks until we then release them to work on their own on a particular area”

新人にシステムの一部だけの狭い仕事から始めさせ、少しずつ仕事の流れに慣れさせていた会社があった [Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects(2026)]

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  • 状況: スウェーデンの 4 社で、大規模アジャイルのプロジェクトの新人の受け入れを調べた複数ケース研究(41 件の聞き取り)。システムが大きく、全体を理解するのに時間がかかる環境で、新人にどう仕事を渡すかの話である。
  • やったこと: ケース T と A では、新人が狭い仕事から始め、仕事の流れに少しずつ慣れていった。ケース A のチームは、システムのすべてを知らなくても、一部だけを担わせる仕事を渡した。ケース A には、あまり使われていないプロダクトを新人に当てて、コードや、システムのつながりを紹介した例もある。ケース S では、新人が別のメンバーと組み、支えを受けながら仕事を 1 つ受け持った。
  • 起きたこと: ケース T の開発者は、基本の力を付けるための仕事を、チームの人が作ってくれたと述べた。著者は、狭い仕事に絞ることで、新人が最初に理解する範囲が限られ、システムの複雑さに圧倒されにくくなると解釈している。新人の理解の速さや定着を測った値は書かれていない。
  • 注意点: 聞き取りの発言と著者の解釈にもとづく報告で、狭い仕事から始めた場合と比べた結果ではない。システムと仕事の流れに慣れるための進め方で、スクラムやアジャイルの考え方を教える方法として検証されたものではない。ソフトウェア開発者の新人の話で、プロダクトオーナーやスクラムマスターなど他の役割にはそのまま当てはまらない。
  • 根拠: 事例研究/複数チーム。文献: Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects: A Multiple Case Study(2026)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.1.5 Training。確認の根拠: 原典
  • 原文: “In cases T and A, newcomers start with narrow tasks and progressively familiarise themselves with the workflow.”

新人を経験のある同僚と組ませ、一人で開発できるようになるまで見て学ばせていた [Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects(2026)]

Section titled “新人を経験のある同僚と組ませ、一人で開発できるようになるまで見て学ばせていた [Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects(2026)]”
  • 状況: スウェーデンの 4 社で、大規模アジャイルのプロジェクトの新人の受け入れを調べた複数ケース研究(41 件の聞き取り)。ケース S、T、A の三つで、新人がペアプログラミングをしたと挙がっている。
  • やったこと: 新人を同僚と組ませ、経験のある同僚の仕事を見て、一緒に作業し、指導を受ける形にした。一人で開発できるようになるまで、これを続けた。ケース A では、最初のうちは新人と何度も席を並べ、シニアと組ませた例が挙がっている。
  • 起きたこと: 聞き取りの発言として、組んで見て学ぶ形が語られている(たとえば、一人で開発できる準備ができるまで、開発している人に付いて見る形)。ペアにした場合としない場合を比べた結果や、理解の程度を測った値は書かれていない。
  • 注意点: 聞き取りの発言にもとづく報告で、効果は測られていない。コードを書く新人(開発者)の学び方の話で、スクラムの考え方やイベントを教える方法として調べたものではない。著者は、ペアプログラミングはアジャイルの構造化された実践だが、学びは協力と対話から自然に生まれると書いている。
  • 根拠: 事例研究/複数チーム。文献: Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects: A Multiple Case Study(2026)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.1.5 Training。確認の根拠: 原典
  • 原文: “Newcomers observe the works of experienced colleagues, collaborate with them and receive guidance until they are capable of working independently.”

ある会社では、プロダクトオーナーとスクラムマスターが新人を支え、システムの見方を話し、スプリントの進み方を話していた [Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects(2026)]

Section titled “ある会社では、プロダクトオーナーとスクラムマスターが新人を支え、システムの見方を話し、スプリントの進み方を話していた [Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects(2026)]”
  • 状況: スウェーデンの 4 社で、大規模アジャイルのプロジェクトの新人の受け入れを調べた複数ケース研究(41 件の聞き取り。SAFe を使う 2 社、LeSS を使う 2 社)。そのうちケース A は、LeSS を実践する中堅のソフトウェア・サービス会社で、機能横断型のチームで動く。大規模アジャイルでは、技術の見方とビジネスの見方の両方を保つことが同じく重要だと、著者は書いている。
  • やったこと: ケース A は、プロダクトオーナーとスクラムマスターに、新人のコーチと支えを担わせていた。チームが会議を延ばし、プロダクトオーナーが自分から見たシステムを新人に話した。スクラムマスターは、時間を取って新人を軌道に乗せ、アプリケーションを紹介した。スクラムマスターは、新人がスクラムのイベントを進めるのを助けてもいる(スプリントの進み方を話す)。
  • 起きたこと: ケース A の開発者の発言として挙がっていて、新人の理解が進んだかを測った値は書かれていない。スクラムマスターが新人に「スプリントの進み方」を話すという短い記述があるだけで、何をどう教えたかの中身は本文に詳しく書かれていない。
  • 注意点: ケース A の聞き取りの短い発言にもとづく報告で、効果は測られていない。著者の表では、スクラムマスターの支えとプロダクトオーナーの支えが現れるのは、4 社のうちケース A だけである。大規模アジャイル(LeSS)の環境の話で、役割ごとの教え方の手順を示したものではない。新人にスクラムそのものをどう教えたかは、ほぼ書かれていない。
  • 根拠: 事例研究/複数チーム。文献: Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects: A Multiple Case Study(2026)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.1.4 Coaching and support / 4.2.4 Knowledge of culture。確認の根拠: 原典
  • 原文: “Case A employs a product owner and scrum master to provide coaching and support.”

政府のイノベーションフェローシップで、公務員がアジャイルの研修や知識をほとんど持たず、誰でも出られる金曜のワークショップを開いたが、学んだことを試す時間が足りなかった [Resolving Agile Ambidexterity(2026)]

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  • 状況: 欧州の連邦政府で、民間から来たイノベーションフェローと公務員がペアを組んでアジャイルな働き方を試す取り組みを調べた質的な研究。フェローによれば、公務員はアジャイルの研修、経験、知識をほとんど持っていなかった。公務員は、フィードバックの短い周期を次の作業の計画に入れる進め方にも慣れておらず、通常の業務に加えてこの取り組みを担っていた。
  • やったこと: フェローは、誰でも参加できる金曜のワークショップを開いて、この知識不足を和らげようとした。
  • 起きたこと: ワークショップで取り上げた新しいやり方を学んだり試したりする時間は、短すぎたと報告された。学びは暗黙のままで、状況に依存したものと見られ、知識が組織の他の部分に移りにくかったと著者は書いている。組織には、アジャイルの新しい知識を日々の業務に取り込む決まりごとが無く、文書化も乏しかったので、アジャイルの実践に関する知識は他の部署に伝わりにくかった。こうした条件が解消されないと、公務員はアジャイルに両面の気持ちを持ち続けたと著者は整理している。
  • 注意点: フェローの報告にもとづく質的な研究で、ワークショップの内容、回数、参加者の数は書かれていない。ワークショップの効果を測った値も無い。公務員の知識不足は、公務員自身の評価ではなく、フェローの見立てとして書かれている。公務員が通常の業務と並行して担う取り組みという、官僚的な組織の事例で、スクラムの新人を民間のチームに迎える場面とは前提が違う。
  • 根拠: 事例研究/複数チーム。文献: Resolving Agile Ambidexterity: Between Ambivalence, Adaptation, and Accommodation(2026)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.2 Pathway 1: Ambivalence and/or Rejection Based on Continued Tension Between Agile and Administrative Routines。確認の根拠: 原典
  • 原文: “The fellows aimed to mitigate this by offering workshops on Fridays that were open to everyone”

開発者はスクラムマスターの振る舞いを観察して真似ることでアジャイルな働き方を学び、特に始めたばかりの時期にそれが大切とされた [An empirical study on changing leadership in agile teams(2021)]

Section titled “開発者はスクラムマスターの振る舞いを観察して真似ることでアジャイルな働き方を学び、特に始めたばかりの時期にそれが大切とされた [An empirical study on changing leadership in agile teams(2021)]”
  • 状況: Bosch の複数の事業部でスクラムマスター・開発者・プロダクトオーナーに聞き取りをした研究。スクラムマスターの一部は、アジャイルの価値を信じていることそのものが、周囲への手本になると語った。
  • やったこと: スクラムマスターが自分で価値を信じて振る舞い、開発者がそれを見て学ぶ。これを著者は Change Agent の役割と呼ぶ。いくつかのチームでは、スクラムマスターが最初はチームのイベントを自分で開いていたが、しばらくするとチームのメンバーが自分たちで開くようになった。
  • 起きたこと: 著者は、開発者は Change Agent を観察して真似ることでアジャイルなやり方を学ぶので、アジャイルのチームを始めるときには特にこの役割が大切だと書いている。チームが成熟するにつれ、メンバーは自分でも納得するようになり、この役割の出番は減るとしている。また、アジャイルを求めながら自分ではその価値や振る舞いを受け入れていないリーダーは、開発者を動かしにくいだろうと著者は推測している。
  • 注意点: 「始めたばかりの時期に大切」は、聞き取りの発言と観察にもとづく著者の整理で、始める時期の有無で比べたものではない。推測と書かれている部分(リーダー自身が価値を受け入れていない場合)は、検証された結果ではない。 1 社内の研究で、1 つのスクラムチームを新しく立ち上げる場面を追った報告ではない。
  • 根拠: 事例研究/複数チーム。文献: An empirical study on changing leadership in agile teams(2021)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.1.4 Role 4: Change Agent / 4.1.1 Role 1: Method Champion。確認の根拠: 原典
  • 原文: “The developers learn the agile manner by observing the Change Agent and imitating this behavior. Therefore, it is especially important at the beginning when implementing agile teams.”

スクラムマスターの大多数が、チームの人が手法に慣れるのを一歩ずつ手伝い、一部は失敗を恐れない心構えを育てようとした [Leadership Gap in Agile Teams(2019)]

Section titled “スクラムマスターの大多数が、チームの人が手法に慣れるのを一歩ずつ手伝い、一部は失敗を恐れない心構えを育てようとした [Leadership Gap in Agile Teams(2019)]”
  • 状況: Robert Bosch GmbH の 11 の事業部で、スクラムマスター・プロダクトオーナー・メンバー計 53 人に聞き取りをした研究(グラウンデッド・セオリー)。新しくできたチームで、アジャイルのやり方に納得してもらうことが課題になった。
  • やったこと: スクラムマスターは「Change Agent(変革の担い手)」として、手本を示し、習慣を変え、新しくできたプロジェクトチームにアジャイルな働き方を納得してもらおうとした。大多数は手法に一歩ずつ慣れるのを手伝い、一部は失敗を恐れない、結果に対して開かれているといった心構えを育てようとした。
  • 起きたこと: あるスクラムマスターは、最初は一部のメンバーにアジャイルのやり方を納得してもらうのが難しかったが、今ではチームは別のやり方で働きたがらないと思う、と語った。著者は、メンバーが自分から変革の担い手として他の人を説得し始めたチームには出会わなかったと書いている。また、この役割は新しくできたチームの初期には大切かもしれないが、チームが成熟するにつれて不要になるかもしれない、と述べている(推測)。
  • 注意点: 過去を振り返っての聞き取りで、慣れの速さや納得した人の数は測られていない。「初期に大切」「成熟すると不要になる」は著者の推測(might)で、検証された結果ではない。未経験の新人に教える場面に限った報告ではない。
  • 根拠: 事例研究/複数チーム。文献: Leadership Gap in Agile Teams: How Teams and Scrum Masters Mature(2019)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.1 Nine Scrum Master Roles(Role 4: Change Agent)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “a large majority helped team members get used to the method step by step”

スクラムマスターの一部が、チームに学ぶ時間を取るよう促し、勉強会や会議への参加を勧めた [Leadership Gap in Agile Teams(2019)]

Section titled “スクラムマスターの一部が、チームに学ぶ時間を取るよう促し、勉強会や会議への参加を勧めた [Leadership Gap in Agile Teams(2019)]”
  • 状況: Robert Bosch GmbH の 11 の事業部で、スクラムマスター・プロダクトオーナー・メンバー計 53 人に聞き取りをした研究(グラウンデッド・セオリー)。スクラムマスターの役割の 1 つに、チームに必要な知識を見極め、その習得を支える「Knowledge Enabler(知識の支え手)」がある。
  • やったこと: 一部のスクラムマスターは、チームに学ぶ時間を取るよう促した。チームが近くに座り、互いに気軽に話しかけて学び合い、共通の理解を作れるよう、管理職を説得した人もいた。研修や本のような従来の学び方のほかに、ユーザーグループや勉強会があることを伝え、チームでカンファレンスに行った例もある。
  • 起きたこと: 結果の記述なし。 メンバーの側では、技術的な専門性を持つスクラムマスターにフィードバックを求める人もいれば、仲間どうしでフィードバックを受けるようになった人もいた。仲間の机に行って 45 分ほど一緒に取り組む、といった気軽な学び合いも語られた。促した結果として学びがどれだけ進んだかは書かれていない(結果の記述なし)。
  • 注意点: 過去を振り返っての聞き取りで、効果を測った値は無い。学ぶ内容がスクラムなのか、技術なのかは、この節では分けて書かれていない。未経験の新人に教える場面に限った報告ではなく、1 社の調査である。
  • 根拠: 事例研究/複数チーム。文献: Leadership Gap in Agile Teams: How Teams and Scrum Masters Mature(2019)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.1 Nine Scrum Master Roles(Role 8: Knowledge Enabler)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “Some Scrum Masters urged teams to take time for learning.”

スクラムマスターの大多数が、手法を自分の主な仕事に挙げた [Leadership Gap in Agile Teams(2019)]

Section titled “スクラムマスターの大多数が、手法を自分の主な仕事に挙げた [Leadership Gap in Agile Teams(2019)]”
  • 状況: Robert Bosch GmbH の 11 の事業部で、スクラムマスター・プロダクトオーナー・メンバー計 53 人に聞き取りをした研究(グラウンデッド・セオリー)。対象のチームは、ソフトウェア開発とそれ以外の合計 29 チームで、チームができてからの期間は 3 か月から 3 年だった。
  • やったこと: スクラムマスターは「Method Champion(手法の旗振り役)」として、会議や集まりを開き、手法を教え、タスクや目標を言葉にするのを助け、情報を見えるようにし、ふりかえりで手法の調整を話し合った。
  • 起きたこと: 著者によれば、スクラムマスターの大多数が手法を主な仕事に挙げ、多くはチームが自分たちの状況に合わせて手法を調整するのを継続して手伝ったと強調した。チーム側では、スクラムマスターが最初は集まりを開いていたが、しばらくするとメンバーが自分たちで開くようになったと語るチームがあった。 2 つのチームは、自分たちの発意で情報をボードに見えるようにし、それが学びと知識の交換の方法だったと述べた。教え方の中身や、教えた効果を測った値は書かれていない。
  • 注意点: 過去を振り返っての聞き取りで、著者は記憶が変わりうるので再現が難しいと書いている。手法を「教える」ことの具体的な進め方(研修か、日々の説明か、など)は、この節では書かれていない。未経験の新人に教える場面に限った報告ではなく、すでに動いているチームを含む 1 社の調査である。
  • 根拠: 事例研究/複数チーム。文献: Leadership Gap in Agile Teams: How Teams and Scrum Masters Mature(2019)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.1 Nine Scrum Master Roles(Role 1: Method Champion)/ 7 Limitations and Future Work。確認の根拠: 原典
  • 原文: “A large majority of Scrum Masters mentioned the method to be their main task when working with agile teams.”

遠隔のスクラムチームで、スクラムマスターが 1 日の質疑中心の研修を開き、対策全体への参加者の評価は好意的だった [Overcoming Challenges of Virtual Scrum Teams(2023)]

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  • 状況: ポーランドにあるシステム会社で、航空会社向けのシステムとモバイルアプリを開発する 2 つのスクラムチームを対象に、COVID-19 で急に遠隔勤務へ移った後の課題を探った 6 か月のアクションリサーチ。業界での経験と Scrum での経験が長い人は、遠隔になって、枠組みの原則が崩れ始めたと指摘した。透明性と自己組織化といった Scrum の原則を保つために、研修を開くことにした。
  • やったこと: 2 つのチームそれぞれに、スクラムマスターが、質疑の多い 1 日の研修を開いた。内容は、いろいろなプロジェクト管理手法の概観、アジャイルマニフェスト、Scrum の枠組み(原則・成果物・イベント・役割・強み)、Scrum と SAFe の比較、まとめの 5 つで、2 チームとも同じ流れだった。同じ周期に、プロジェクトのビジョンとチームの要望を話し合うワークショップ、週に 1 日のオフィス勤務、会議の最後の要約、カメラとマイクを入れたままにする対策も行った。
  • 起きたこと: 評価では「Scrum の研修を行うと、確立された枠組みの原則を守れるようになった」かを尋ね、第二周期の対策全体への反応は圧倒的に好意的だった。著者は、Scrum をよく理解していることが、チームがうまく協力する力を高める、遠隔の環境ではチームの不具合が表に出るので、Scrum の進め方を直すには枠組みの包括的な知識が要り、それは研修への参加で得られる、と結論づけた。研修だけの効果を測った値は、本文に書かれていない。
  • 注意点: 評価はアンケートと議論にもとづく主観的なもので、研修の項目だけの結果は本文に書かれていない。研修は、ワークショップや出社の取り決めなどと同時に行われ、研修だけの効果は切り分けられていない。参加者が Scrum を初めて学ぶ人だったかは書かれていない。経験の長い人が原則の崩れを指摘した研究で、未経験の新人に教える場面そのものではない。全員が遠隔で働いていた 2 チームの例で、1 社である。著者は、評価が主観的で、遠隔勤務を好む参加者に偏る可能性を限界として挙げている。
  • 根拠: アクションリサーチ/複数チーム。文献: Overcoming Challenges of Virtual Scrum Teams: Lessons Learned Through an Action Research Study(2023)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 3.2 The Second Action Research Cycle(Action Planning / Evaluating / Specifying Learning)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “it was decided to conduct Q&A-heavy single-day training sessions for both teams on the Scrum framework”

大学の授業を eduScrum で運営した試行で、学生の評価は好意的だったが、始まる前に eduScrum の情報が少なかったことが弱い点として挙がった [An Implementation and Evaluation Report of the Active…(2020)]

Section titled “大学の授業を eduScrum で運営した試行で、学生の評価は好意的だったが、始まる前に eduScrum の情報が少なかったことが弱い点として挙がった [An Implementation and Evaluation Report of the Active…(2020)]”
  • 状況: ドイツの大学の修士課程のセミナー「AUTOSAR に基づくソフトウェア設計」を、eduScrum(教育向けに作り替えた Scrum)で運営した試行。教員がプロダクトオーナー、学生の 1 人がスクラムマスター、学生のグループが eduScrum チームを務める。参加は学生の任意で、最初の学期は 80 人中 30 人、次の学期は 85 人中 40 人が登録した。 Scrum を教える授業ではなく、授業の内容を学ぶ手段として Scrum を使う事例である。学生が Scrum を知っていたかは書かれていない。
  • やったこと: 論文は、eduScrum の用語と背景の理論は導入の講義で学生に説明すべきだと述べている。実際にどう説明したかの詳しい記述は無い。学習管理システム上に、eduScrum の活動を置いたオンラインの講座を作り、24 時間いつでも使える個別指導の場とした。チームを作る場で学生が自己紹介し、チームの中から話し合いでスクラムマスターを決めた。
  • 起きたこと: 2 回目の学期に、40 人の登録者のうち 15 人が評価の質問票に答え、評価は非常に好意的だった。回答は一部にとどまり、著者自身が、結果は授業全体の意見としては使えないと述べている。著者は、試行の弱い点として、授業を選ぶ時点で eduScrum についての情報が少なかったことと、学生が学習管理システムの使い方に十分慣れていなかったことを挙げ、次の学期の改善に生かすとしている。
  • 注意点: 回答率が低く、評価は自己申告である。原文は回答を約 23% と書くが、15 人は 40 人の 37.5% にあたり、原文の中で数字が合っていない。Scrum の理解の程度を測ったものではなく、授業の内容や教え方の比較もない。学生が Scrum を初めて学んだかは書かれておらず、「未経験の人にスクラムを教える」場面そのものではない。フリップド・クラス(自宅学習が中心)に合わせて作り替えた eduScrum で、職場のチームの話ではない。
  • 根拠: 調査(アンケート)/複数チーム。文献: An Implementation and Evaluation Report of the Active Learning Method EduScrum in Flipped Class(2020)。文献の種類: 論文・研究者。位置: II. The Active Learning Method eduScrum / III.B Data Collection and Processing / IV. Discussion on Results / V. Conclusion。確認の根拠: 原典
  • 原文: “less information about the eduScrum method before the start of the semester”

新しく入った人に、SAFe 研修を初めから勧める会社、導入でアジャイルを説明する会社、全員が出る終日のアジャイル研修を開く会社があった [Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects(2026)]

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  • 状況: スウェーデンの 4 社で、大規模アジャイルのプロジェクトの新人の受け入れを調べた複数ケース研究(41 件の聞き取り。SAFe を使う 2 社、LeSS を使う 2 社)。著者の表では、アジャイルの研修が 4 社すべてに挙がっている。組織の文化として、なぜその実践を取り入れているかと、新人がどのワークフローを使うかを伝える必要があると、著者は書いている。
  • やったこと: ケース S(SAFe)は、「Leading within SAFe」という数日から 1 週間ほどの研修を続けて開き、チームに入る新人が初めから出ることを勧めていた。ケース E(SAFe)は、導入の一部としてアジャイルの導入の場を設け、チームがアジャイルをどう取り入れているかを説明していた。ケース T(LeSS)は、全員が参加する終日のアジャイルの研修を開き、標準的なアジャイルの実践と、そのチームでの使い方を説明していた。
  • 起きたこと: 研修を受けた効果を測った値は書かれていない。ケース S の発言は、新人が研修を最初に受けると述べている。ケース E の発言では、アジャイルの進め方が自分に考えさせてくれるので気に入っている、という好意的な受け止めが挙がっている。ケース T について著者は、新人がアジャイルに慣れるには時間がかかるが、チームはアジャイルの働き方を評価している、と書いている。
  • 注意点: 聞き取りの発言と著者の記述にもとづく報告で、研修の有無で比べた結果ではない。ケース S の研修は SAFe の研修で、スクラムそのものの教え方ではない。ケース T の研修は「全員が参加する」と書かれていて、新人だけを対象にしたとは書かれていない。研修の内容や時間の使い方は、本文に詳しく書かれていない。
  • 根拠: 事例研究/大規模な組織。文献: Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects: A Multiple Case Study(2026)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.2.4 Knowledge of culture。確認の根拠: 原典
  • 原文: “Newcomers joining the teams are encouraged to participate in the SAFe training from the outset.”

アジャイルを 5 年を超えて続けた事業部門が、新しく入った人向けに導入研修で「この組織のアジャイル」の説明会を開き、配属先の専門職と最初の数か月に時間を取る機会を設けた [An exploratory study of sustaining organisational agility(2025)]

Section titled “アジャイルを 5 年を超えて続けた事業部門が、新しく入った人向けに導入研修で「この組織のアジャイル」の説明会を開き、配属先の専門職と最初の数か月に時間を取る機会を設けた [An exploratory study of sustaining organisational agility(2025)]”
  • 状況: ニュージーランドの上場 IT 企業の最大の事業部門 Retail(アジャイルを 5 年を超えて続けた)の質的ケーススタディ。新しく入った人の中には、以前にアジャイルに触れた人もいたが、自己組織化されたチームで働く経験と心構えが足りず、この組織独自のやり方にもなじみがなかった。インタビューを受けた人は、新しい人がチームに入るたびに、なぜこのやり方なのかと聞かれると語った。
  • やったこと: 新しく入る人向けの導入(オンボーディング)で、「Agile at [組織名]」というセッションを開いた。内容は、アジャイルとは何か(大づかみに)、この組織で何を意味するか、働き方の要点、なぜそう働くのか、用語の説明。配属先に応じて、運用モデルの設計者やデリバリーコーチといったアジャイルの専門職と、最初の数か月に時間を取る機会があると語られた。
  • 起きたこと: インタビューを受けた人は、今は多くのチームが、新しいメンバーがこの組織のやり方とその理由を学ぶのを手伝うのが上手になっていると語った。一方で、離職が増えると教える量が増え、割ける時間は決まっているという課題も語られた。効果を測った値は書かれていない。
  • 注意点: 続けた後の語りで、説明会の効果を測ってはいない。説明会の長さ、回数、参加者の数は書かれていない。インタビューを受けたのは運用モデルの設計者・コーチ・チャプターのオーナーなど組織側の立場の人で、新しく入った人本人の声ではない。単一組織の質的ケーススタディで、複数チームを持つ事業部門の話である。
  • 根拠: 事例研究/大規模な組織。文献: An exploratory study of sustaining organisational agility(2025)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.3.6 Onboarding people to the agile way of working。確認の根拠: 原典
  • 原文: “sessions were held for all newcomers during their induction and onboarding”

チームが増える速さに、コーチと研修が追いつかなかった [Large-scale agile transformation at Ericsson(2018)]

Section titled “チームが増える速さに、コーチと研修が追いつかなかった [Large-scale agile transformation at Ericsson(2018)]”
  • 状況: 複数の国と拠点に分かれた製品開発の組織(Ericsson)。チームの数が急に増える中で、チームを支えるコーチと、アジャイルの知識の広がりが追いつかなかった。
  • やったこと: チーム専任のコーチと、複数のチームと組織全体を担当するコーチを置いた。期間中にコーチを少し増やした。アジャイルの研修を何度か開いたが、参加は任意だった。
  • 起きたこと: 受けたコーチングは非常に有益だと評価されたが、コーチの人数は足りないと感じられていた。チームも同時に増えたので、状況は少ししか改善しなかった。研修は他の仕事が優先されて全員には行き渡らなかった。基本的な用語の理解にも、一部の回答者によると人によって差が残った。 (数値の報告あり。この記録には数値を書いていない)
  • 注意点: 著者は、どちらもこの事例の最も重要な課題ではなかったとしている。根拠は少数の回答者の声である。
  • 根拠: 事例研究/大規模な組織。文献: Large-scale agile transformation at Ericsson: a case study(2018)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.3.4 Lack of Coaching and Coaches / 4.3.5 Lack of Agile Training。確認の根拠: 原典
  • 原文: “The interviewees found coaching they had received extremely useful, but thought that the number of coaches was not sufficient.”

研修への参加が任意で、「完了の定義」のような基本の言葉の理解が人によって揃っていないという声があった [Large-scale agile transformation at Ericsson(2018)]

Section titled “研修への参加が任意で、「完了の定義」のような基本の言葉の理解が人によって揃っていないという声があった [Large-scale agile transformation at Ericsson(2018)]”
  • 状況: 複数の国と拠点に分かれた製品開発の組織(Ericsson)。アジャイルの経験が人によって大きく違い、前の職場で使っていた人もいれば、まったく使ったことのない人もいた。
  • やったこと: アジャイルの研修を何度か開いたが、参加は任意だった。参加しなかった人は、他の仕事を優先していた。研修を必要に応じて開く計画と、拠点をまたぐコーチの協力で、時間をかけて知識を広げる計画があった。
  • 起きたこと: 知識のある人がいても、それが広がりきらなかった。回答者の何人かは、「機能」「ストーリー」「完了の定義」といった基本の言葉が、全員に同じように知られても理解されてもいないと述べた。あるコーチは、完了の定義を話して同意を得た数日後に、同じ質問が戻ってきて、どこまで分かっているのか分からなくなると語った。
  • 注意点: 著者は、この証拠は少数の回答者(特にコーチ)の声で、研修の不足はこの組織の主な懸念の一つではなかったとしている。原文には、組織の多くの人が以前にアジャイルの研修を受けていたという記述もある。研修を必須にして改善したかどうかは、書かれていない。数十人から約 200 人に増えた組織の話で、1 チームで始める場面とは距離がある。
  • 根拠: 事例研究/大規模な組織。文献: Large-scale agile transformation at Ericsson: a case study(2018)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.3.5 Lack of Agile Training。確認の根拠: 原典
  • 原文: “not all employees had participated in these, as participation had been voluntary and they had prioritized other tasks”

今回読んだ範囲では、見つかっていない。

週に 15 時間までの非常勤の新人に、アジャイルの原則と文化を伝えるのが難しいと、チームリードは語った [Onboarding(2020)]

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  • 状況: 英国の大学の IT 部門にある、Scrum で動く開発チームの事例。非常勤の学生や見習いの新人を迎えており、非常勤の新人は週に 15 時間までの勤務で、他の学習もしていた。チームの確立したメンバーは、モチベーションが高く、新人にもそのやり方に合う姿勢を求めていた。
  • やったこと: 介入ではなく、聞き取りで挙がった課題の報告である。
  • 起きたこと: 結果の記述なし。 チームリードは、新人を迎える際のいちばんの課題は、若く経験の浅い非常勤の新人に、没入して学んでもらうことだと語った。週に最大 15 時間で、他の勉強もあるなか、頭にこれを入れる余裕を見つけるのが難しく、原則と文化を伝えることに力を入れたいと述べた。確立したメンバーの水準が高いことが、学生を採るうえで壁になっているとも述べた。非常勤の新人が、欠席中に何があったか分からず、決まったことがツールに残っていないという語りもあった。対処の結果は書かれていない(結果の記述なし)。
  • 注意点: チームリードを中心とする聞き取りで、難しさの程度は測られていない。課題の報告であり、対処や、その結果は書かれていない。学生や見習いの非常勤の新人が対象で、常勤で入る人の話ではない。
  • 根拠: 事例研究/単一チーム。文献: Onboarding: How Newcomers Integrate into an Agile Project Team(2020)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.3 Onboarding Challenges for the Newcomers and the Agile Project Team(Accommodating part-timers / Conveying agile principles)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “Finding space in their brain for this is hard, and it’s being able to get over the principles and culture, which is what I want to focus on”

大学生(実務の新人ではない)を対象に、スクラムの講義だけの群と、講義のあとにゲームを遊んだ群を比べた実験で、ゲームの群だけ知識テストの得点が有意に上がった [Comparing different serious games strategies for teaching…(2021)]

Section titled “大学生(実務の新人ではない)を対象に、スクラムの講義だけの群と、講義のあとにゲームを遊んだ群を比べた実験で、ゲームの群だけ知識テストの得点が有意に上がった [Comparing different serious games strategies for teaching…(2021)]”
  • 状況: 対象は大学生で、実務の新人ではない。イタジュバ連邦大学の「ソフトウェアプロジェクト管理」の授業を受ける、情報システムとコンピュータ科学の学部生である。スクラムを教える手段として、著者らが作った仮想ゲーム(SCRUM in Space)と、既存のボードゲーム(SCRUMI)を、従来の講義と比べた計画的な実験である。実際の仕事の場での教え方や、チームの中での新人の受け入れを調べたものではない。
  • やったこと: 一つの授業の中で、学生はまずスクラムの主な概念を問う知識テストを受け、次にスクラムの講義を受けた。その後、学生を三つの群に分けた。講義だけの群は、そのまま同じテストをもう一度受けた。残りの二つの群は、それぞれボードゲーム SCRUMI か、仮想ゲーム SCRUM in Space を遊んでから、同じテストをもう一度受けた。標本が小さいという判断で、同じ条件の実験を学生を替えてもう一度行い、合計の人数で分析している。割り当てはランダムとしているが、ゲームが Windows 向けだったため、Linux を使う学生は講義だけの群に回した。
  • 起きたこと: 講義だけの群は、図では得点が上がって見えるが、前後の差は統計的に有意でなかったと著者は報告している。二つのゲームの群は、いずれも前後の差が有意だった。ゲームの群は、講義だけの群より有意に高い学習ゲインを示したと著者は述べ、二つのゲームの間には有意な差が無かった。著者は、ゲームは従来の授業を補う道具になりうると結論している。数値(得点・人数・検定の値)は本文にあるが、原典で照合していないため、ここには書かない。 (数値の報告あり。この記録には数値を書いていない)
  • 注意点: 対象は大学生で、実務の新人にスクラムを教える場面とは前提が違う。この結果を、実務の新人への教え方の根拠とは読まない。測ったのは、スクラムの概念を問う短い知識テストの得点で、同じ授業の中で前後に受けている。仕事での使い方や、時間をおいた後の理解は測っていない。ゲームの群は、講義に加えてゲームを遊ぶ時間があった一方、講義だけの群は追加の時間が無く、学習時間の差が結果に混ざっている。テストの問いは、ゲームで扱う問いを使って作られたと本文に書かれていて、ゲームの群に有利な可能性がある。著者らは、評価した二つのうち SCRUM in Space の開発者である。群の人数は小さく、群ごとに人数が揃っていない。Linux の学生を講義だけの群に回したことで、群の構成も偏っている。学習ゲインを表す式の向きが本文の説明と読み合わない箇所がある。
  • 根拠: データ分析/単一チーム。文献: Comparing different serious games strategies for teaching the SCRUM Framework(2021)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4 Mini games assessment methodology and results(4.2 Description of the Experiment / 4.3 Experiment Results)/ 5 Conclusion。確認の根拠: 原典

導入の授業や会議を詰めた会社で、新人は情報が多すぎてつらかったと語った [Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects(2026)]

Section titled “導入の授業や会議を詰めた会社で、新人は情報が多すぎてつらかったと語った [Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects(2026)]”
  • 状況: スウェーデンの 4 社で、大規模アジャイルのプロジェクトの新人の受け入れを調べた複数ケース研究(41 件の聞き取り)。ケース E(SAFe)は 100 日の計画を持ち、最初の 2 週間に 10 回の導入の会議を置いていた。
  • やったこと: 介入ではなく、聞き取りで挙がった課題の報告である。
  • 起きたこと: 結果の記述なし。 ケース E のプロジェクトマネージャーは、導入の授業や会議が 2 日半びっしり詰まり、とてもストレスが大きかったと語った。ケース A でも情報があふれていたという発言があった。ケース T の開発者は、導入の研修と実際の仕事の間に、小さな段階を挟んでほしかったと述べた。対処の結果は書かれていない(結果の記述なし)。
  • 注意点: 聞き取りの発言にもとづく課題の報告で、負担の程度は測られていない。導入の授業や会議の一般の話で、スクラムを教える場面に限った話ではない。対処やその結果は書かれていない。
  • 根拠: 事例研究/複数チーム。文献: Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects: A Multiple Case Study(2026)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.3.2 Individual challenges(Cognitive overload)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “The sheer volume of information presented in tightly scheduled introductory meetings creates tense situations for newcomers, resulting in mental fatigue and minimal reflection.”

新人は、知識が足りないために質問そのものができないことがあり、チームはどこが分かっていないかをつかみにくいと、著者は書いている [Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects(2026)]

Section titled “新人は、知識が足りないために質問そのものができないことがあり、チームはどこが分かっていないかをつかみにくいと、著者は書いている [Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects(2026)]”
  • 状況: スウェーデンの 4 社で、大規模アジャイルのプロジェクトの新人の受け入れを調べた複数ケース研究(41 件の聞き取り)。専門性が高く複雑なシステムの環境で、新人が会議や議論でどう振る舞うかの報告である。
  • やったこと: 介入ではなく、聞き取りで挙がった課題の報告である。同じ報告の中で、ケース T は、質問を書き留めてもらい、質問のための 1 時間を設けている。質問してよい文化も作っている。
  • 起きたこと: 結果の記述なし。 ケース T のメンバーは、新人が何を尋ねていないのかは、こちらからは分からないので難しい、と述べた。著者は、新人があまり議論に加わらないと書いている。ケース A のメンバーは、新人やエネルギーの低い性格の人は、助けを求めたがらないことに気づくと述べた(AP6 の見立て)。ケース T の開発者は、分からなくても誰も怒らないと分かっているが、ときどき怖い、と述べた。著者は、質問の時間が新人の不安を減らすと書いているが、測定ではなく、沈黙が減ったかも測られていない。
  • 注意点: 聞き取りの発言にもとづく報告で、新人の理解の程度は測られていない。スクラムの教え方に限った話ではなく、新人の心理的安全性の障壁として挙がったものである。質問の時間の取り組みは別の項目に書かれていて、新人の沈黙が減ったかは書かれていない。
  • 根拠: 事例研究/複数チーム。文献: Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects: A Multiple Case Study(2026)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.3.2 Individual challenges(Barriers to psychological safety)/ 4.1.4 Coaching and support。確認の根拠: 原典
  • 原文: “remain silent because they lack the knowledge needed to raise queries.”

遠隔や混在の勤務で入った新人は、チームをまたぐ協力や計画に加わるのが難しかったと語られていた [Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects(2026)]

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  • 状況: スウェーデンの 4 社で、大規模アジャイルのプロジェクトの新人の受け入れを調べた複数ケース研究(41 件の聞き取り)。著者は、遠隔と出社を分けて働くハイブリッド勤務では、遠隔の新人がチームをまたぐ協力や同期した計画に加わるのが難しいと書いている。
  • やったこと: 介入ではなく、聞き取りで挙がった課題の報告である。
  • 起きたこと: 結果の記述なし。 ケース A の遠隔で働くメンバーは、チームをまたぐ動きには、もっと形式の整った導入がほしかったと述べた。同じメンバーは、誰に連絡すべきかがはっきりせず、非公式にやり取りされる情報を逃すとも述べた。ケース A の開発者は、MS Teams 上でやり取りがないと孤立を感じることがある、と述べた。対処の結果は書かれていない(結果の記述なし)。
  • 注意点: 聞き取りの発言にもとづく課題の報告で、困難の程度は測られていない。遠隔の新人に何をどう教えたかの事例ではなく、対処やその結果は書かれていない。チームをまたぐ大規模アジャイルの環境の話で、1 つのスクラムチームの中の教え方には当てはまらない可能性がある。
  • 根拠: 事例研究/複数チーム。文献: Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects: A Multiple Case Study(2026)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.3.3 Contextual challenges(Remote onboarding)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “It is challenging for remote newcomers to integrate into cross-team collaborations and synchronised planning.”

実際の仕事でやりながら学ぶチームへのコーチングが成功要因とされ、12 事例が挙げた(大規模アジャイル変革のレビュー) [Challenges and success factors for large-scale agile…(2016)]

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  • 状況: 大規模アジャイル変革の系統的文献レビュー。成功要因の 1 つ「Coach teams as they learn by doing(やりながら学ぶチームをコーチする)」を挙げた事例は 12 事例(29%)で、成功要因の中で最も多い部類に入る。アジャイルの手法は決まったやり方を定めず、状況に合わせる心構えを重んじるので、理論では説明しにくく、やってみて学ぶのが良いとされる。
  • やったこと: チームがアジャイルの手法を実際に使っている間に、コーチが付き添った。社内のコーチも社外のコーチも使われた。
  • 起きたこと: チームが実践するときのコーチングが変革の重要な要因とされた(P3・P16・P17・P30・P47)。成功に不可欠とまで述べた事例もある(P8・P18・P29・P33)。コーチは問題が起きたときに見つけて正せる(P16・P42)、道具から原則の理解へ注意を向けさせた(P42・P48)という利点が挙がる。社外のコーチは組織を客観的に見られ(P16・P44)、社内のコーチは話しかけやすく組織の事情を知っている(P3・P6)と書かれている。コーチがいないと、手法を誤って使ってチームが変革を傷つけうるとも述べられている(P9)。
  • 注意点: 体験報告が中心で、コーチの人数・関わり方・期間はこの節では書かれていない。レビューの対象は大規模な変革で、1 チームだけで始める場合の話とは距離がある。社内と社外のどちらが良いかを比べた結果ではない。
  • 根拠: 文献レビュー/大規模な組織。文献: Challenges and success factors for large-scale agile transformations: A systematic literature review(2016)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.3.6 Training and coaching / Coach teams as they learn by doing(件数は表 12)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “Coaching teams while they apply the agile methods in practice was seen as an important factor in change [P3, P16, P17, P30, P47].”

研修に出るだけでは心構えの転換は難しく、実際の仕事の場でのコーチが要る、と述べられている(2 研究、P9・P23) [Challenges and success factors for large-scale agile…(2016)]

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  • 状況: 大規模アジャイル変革の系統的文献レビューの課題の 1 つ「Lack of coaching(コーチングの不足)」の節にある記述。この課題を挙げた事例は 6 つ(14%)。
  • やったこと: 介入の記述ではなく、課題の報告である。研修だけで済ませた場合ではなく、実際の仕事の環境でのコーチングを併せて用意する必要が述べられている。
  • 起きたこと: 研修を受けるだけでは、考え方の転換は難しいと述べられている(P9・P23)。多数のチームをコーチする必要があった事例では、需要が使えるコーチの数を超えたこと(P1・P6・P23・P49)、パイロットチームの成功を、広げたときに再現できなかった理由にコーチ不足が挙げられたこと(P9・P45)も書かれている。
  • 注意点: 体験報告が中心で、研修だけで済ませた組織と、コーチも付けた組織を比べた結果ではない。需要が供給を超えた記述は、多数のチームを抱える大きな変革の話で、1 チームで始める場合は当てはまらないかもしれない。
  • 根拠: 文献レビュー/大規模な組織。文献: Challenges and success factors for large-scale agile transformations: A systematic literature review(2016)。文献の種類: 論文・研究者。位置: 4.2.2 Lack of investment / Lack of coaching(件数は表 11)。確認の根拠: 原典
  • 原文: “It is critical to coach teams in their real work environment as a proper change in mindset is difficult to achieve only by attending training sessions [P9, P23].”
文献年ライセンス記録の数
Challenges and success factors for large-scale agile transformations: A systematic literature review2016CC BY 4.02
An empirical study on changing leadership in agile teams2021CC BY 4.01
An exploratory study of sustaining organisational agility2025CC BY 4.01
An Implementation and Evaluation Report of the Active Learning Method EduScrum in Flipped Class2020CC BY 4.01
Large-scale agile transformation at Ericsson: a case study2018CC BY 4.02
Leadership Gap in Agile Teams: How Teams and Scrum Masters Mature2019CC BY 4.03
Onboarding Model to Integrate Newcomers into Scrum Team at an Insurance Company2024CC BY-SA 4.05
Onboarding: How Newcomers Integrate into an Agile Project Team2020CC BY 4.06
Onboarding Newcomers in Large-Scale Agile Projects: A Multiple Case Study2026CC BY 4.07
Overcoming Challenges of Virtual Scrum Teams: Lessons Learned Through an Action Research Study2023CC BY 4.01
Resolving Agile Ambidexterity: Between Ambivalence, Adaptation, and Accommodation2026CC BY 4.01
Comparing different serious games strategies for teaching the SCRUM Framework2021CC BY-NC-SA 4.01

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評価コメント:

  • 【評価理由・指摘事項】 1. Faithfulness(忠実性): 5/5 - 前提コンテキストに書かれていない外部知識、俗説、独自の推測・断定は一切含まれていません。 - 各事例の取り組み(イベント直前の説明、初日からのOJT、スクラムガイド送付による自習、ペア作業、段階的なタスク付与、研修とコーチングの併用など)だけでなく、コンテキストに明記されている「注意点・限界」(効果が比較検証されていないこと、対象が大学生であり実務新人ではないこと、主観的な受け止めに過ぎないこと、研修単体の効果が切り分けられていないこと等)まで極めて正確にトレースされています。 - 保険会社の事例について「スクラムマスターの振る舞いを手本にさせていました」と、やや意図的な施策のように読める表現が一部見られますが(元の注意点では「教えるために設けた手順とは書かれていない」「学んだのは確立したメンバー」と言及あり)、著者の記述の範囲内に収まっており、コンテキストを逸脱する捏造や歪曲はありません。 2. Relevance(質問への関連性): 4/5 - 「スクラム未経験の新人やメンバーに、スクラムをどう教えるか?」という問いに対し、「実務で比較して効果を確かめた文献は存在しない」という本質的な事実を冒頭で提示した上で、コンテキスト内で確認できる具体的な教育アプローチ(事前説明、OJT、ペア作業、自習、コーチング等)とそれぞれの課題を網羅して答えています。 - ただし、回答の構成がコンテキストに含まれる各事例を順次要約・列挙する形式に終始しており、「教え方の類型(事前の形式知インプット、実践を通じたOJT/ペア作業、コーチや手本による伴走など)」ごとに整理・構造化されていないため、質問に対する実践的な選択肢の提示としてはやや見通しが悪くなっています。この構造化の余地を考慮し4点と評価します。